
群馬の稽古場は、高崎から榛名山へ向かって約十数キロ程の、箕郷という山里にあります。私の住む所沢からは車で二時間くらいですが、昼間は道路が混むので、稽古日の前日、深夜に移動してしまうことが多いのです。 別荘というには程遠いものですが、都市にはない、四季折々の豊かな自然に触れることが出来るのは楽しいことです。近頃は蛙の鳴き声が賑やかです。 またこの時期は一雨降るごとに草がアッという間に伸びてしまいます。今回は前回の稽古から少し間があいたので、着いてみたら景色の変わりようにビックリ!30センチにも伸びた綿帽子のタンポポがそこらじゅうに生えているではありませんか。 街頭もなく、薄暗い月明かりに照らされたタンポポの群生はかなり不気味でした。真夜中に塵界から逃れてやっと辿り着いたのに、其処に見たのは、黄泉の国の入り口だった、という感じです・・・。 自然は都市生活に疲弊した人間に安らぎを与えてくれると簡単に信じがちですが、本当は人の心を真底、蒼ざめさせるものかも知れません。 幻想芸術はこんなところから生まれるのではないでしょうか。