ご無沙汰・・・というにも限度があるとのお叱りに、背中を丸めながらご挨拶を申し上げます・・・。
明けましておめでとうございます。旧年中は多くの皆様にご厚誼賜り、誠に有難うございました。皆様のご支援のお声を心の糧に、昨年も演奏活動を何とか続けることが出来ました。心より御礼申し上げます。
さて昨年参加した文化庁芸術祭で何と優秀賞をいただきました。思いもかけない二年続けての受賞に、まだ実感が湧かないでおります。会場にお運びくださった皆様の後押しあればこその演奏会で、本当に有難いことでした。重ね重ね御礼申し上げます。様々な方からお祝いのお言葉を頂戴しました。中でも本当に有難かったことは、そのお祝いのお言葉の最後に、多くの方が「驕らずに今後のご精進を」という一言を添えてくださったことだと思っています。
丸山正男という人の有名な講演録にある、“「である」ということと「する」ということ”を思い出しました。
政治家、或いは経済人の類は何を「する」かということが問われ、一方、学術、芸術に携わるものは、自分が何「である」か、或いは真実が何「である」かを、いかに言い切るかを問われるべき人種なのであると。しかるに現社会においては、その逆で、たとえば政治家は二世議員「である」ということを誇ってみたり、学者、芸術家は自分の学説、作品がどのような経済効果を生んだかとか、つまり何を「するか」に血眼になっていて、それは本末転倒であろうという話です。
芸術作品におけるコンクールの評価は、自分は何「である」かという真っ正直な取り組みに対する激励なのですね。ところが演奏家は自分の演奏の良し悪しを掛けてついつい他と勝負しようという野心が生まれて来る訳です。受賞に際して多くの皆様が「驕らずに」という言葉を掛けて下さったのには、そういうことを戒める深い意味があると肝に命じました。
心より御礼申し上げます。